2014年01月11日

「水車のある村」をめざして歩いていかなければならない 〜レビュー:黒澤明監督『夢』(1990年公開)〜




黒澤明監督みずからが見た夢を題材にしたオムニバス・ファンタジーです(1990年公開)。「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」「赤冨士」「鬼哭」「水車のある村」という8つのエピソードで夢の世界がつづられます。


黒澤の夢は、自然界に対する畏敬の念をわすれてはいけないという警告からはじまります。しかし人間は、畏敬の念をわすれてしまいました。機械文明・物質文明を極度に発達させて、木々を切りたおし、戦争をおこない、放射能汚染をひきおこし、突然変異を生じさせ、大災害にくるしみます。死者の魂は浄化できず、行き先がわからずにこの世に執着してさまよいます。


そして、水車村にたどりつくと、一人の老人がかたります。


「近ごろの人間は、自分たちも自然の一部だということをわすれている。おれたちはもっといいものができるとおもっている。特に学者には、自然の深い心がさっぱり分からない者が多いのにこまる。汚された空気や水は、人間の心まで汚してしまう」

今日の環境の乱れは、心の乱れであるのです。


夢は、8つのエピソードに分かれていますが、これらの深層には、自然への回帰というテーマが流れているといえるでしょう。睡眠中に見る夢は深層意識(潜在意識)からのメッセージです。黒澤は、心の深層からおくられてきたメッセージを絵にしました。彼は、「鴉」にでてきた蒸気機関車のようにひたすら作品をつくりつづけてきましたが、深層で進行していたもう一つの流れも映像化し、私たちにのこしました。


2011.3.11を経験した私たちは、黒澤のメッセージをうけとめて、「水車のある村」をめざして歩いていかなければなりません。


posted by ジオコスモス at 09:00| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする