2014年01月25日

西洋人とはことなる有機的な自然観 〜レビュー:寺田寅彦著『日本人の自然観』〜

日本の自然、日本人の日常生活、日本人の精神という3つの観点を論じ、自然と人とが渾然と融合した日本人の自然観について考察しています。


日本の自然といえば、地震・津波・火山の爆発が特徴的です。一方で、いろいろのものがモザイク的に少しずつそなわっているミニチュア的な自然、大きな多様性をもった自然でもあります。つまり、活動性と多様性をあわせもっているのが日本の自然の特徴です。寅彦は、日本の自然のこのような二面性を、「厳父」のごとき自然と「慈母」のごとき自然と表現しました。


このような自然の中で生活する私たち日本人は環境から大きな影響をうけ、自然の驚異と神秘を実感してきました。日本人の日常生活と精神のなかにこれをよく見ることできます。日本人には、自然に対して従順になり、自然にさからう代わりに自然を師にして学ぼうという態度がありました。


しかし、西洋には、地震も台風もなく、そこでは自然を恐れることもありません。西洋は、自然を克服し支配しようとする科学の発達には格好の地盤であり、西洋人はこうして科学をつくりました。


このように、日本と西洋とでは、自然の環境にいちじるしい相異があるわけですから、それを無視して、建てるべからずところに人工物を建設したりすれば、克服したつもりの自然のふるった鞭のひと打ちで、実にいくじもなく壊滅してしまいます。明治以後、日本人は西洋科学を無批判にうけいれ模倣してきたましたが、日本と西洋とはこのような相異がある以上、日本人は西洋人にはなりきれません。西洋の思想は、そのままでは根をおろしきれません。それを眼前に見ながら自己の錯誤を悟らないでいると寅彦は警告しています。


寅彦は、日本の自然環境、日本人の生活様式、日本人の心という3つの観点から考察をすすめました。生活様式は文化とよびかえることもでき、つまり、〔自然環境-文化-人〕を一つのシステムとしてとらえなおすことが必要でしょう。ここでいう文化は環境と人とを媒介する役割をはたします。こうして分析的にではなく、全体を有機的にとらえなおすことがこれからはもとめられます。


東日本大震災を経験した私たちは、西洋の分析的科学技術を無批判に日本にあてはめるのではなく、寺田寅彦がのこしたメッセージをうけとめ、活動性と多様性をあわせもった日本の自然に適応するための科学技術なり文化をみずから発達させていかなければなりません。



文献: 寺田寅彦著『日本人の自然観』青空文庫、2003.11.11作成。初出は「東洋思潮」1935年。

posted by ジオコスモス at 18:26| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする